「使われることで価値が生まれる」時代へ
企業にとって、在庫は「資産」であり「リスク」でもあります。仕入れた商品が売れなければ、倉庫に眠るだけの負債になり、キャッシュフローを圧迫します。特に流行や季節性に左右される商品は、売り切るまでの時間との戦いです。
そうした中、近年注目されているのが「レンタル型ビジネス」──つまり、在庫を“売る”のではなく“使ってもらう”ことで価値を生む仕組みです。本記事では、なぜ今「在庫を資産にしない経営」が求められているのか、そしてレンタルモデルが企業にもたらす変化について考察します。
「売れなくても価値がある」仕組みへ
従来のビジネスモデルは、「仕入れて売る」が基本です。在庫は一度売れて初めて収益に転じるため、売れ残れば損失となり、値下げや廃棄が避けられません。
一方、レンタル型ビジネスでは、在庫は「繰り返し使われる」ことによって収益を生み続ける資源になります。たとえ1回で売れなくても、10回貸し出せば10回分の利益が得られる。商品を「点」でなく「線」でとらえる考え方です。
ここでは“所有”ではなく“利用”が価値を生む。そうした世界観の中で、モノは「ずっと使われ続けること」に意味が宿るようになります。
キャッシュフローが軽くなる構造
「在庫は資産」と言いますが、現実には倉庫に眠る商品の維持管理にコストがかかり、資金繰りを圧迫する原因になります。
レンタルモデルでは、販売とは異なる収益設計になります。初期投資で商品を調達した後は、それを複数回貸し出すことで徐々に回収していく。その分、毎月のキャッシュインが安定するサブスクリプションモデルやリピート利用と組み合わせることで、財務構造がなめらかになるのです。
さらに、レンタルの出口として中古販売(2nd)や買取再レンタル(3rd)などの循環ルートを設けることで、在庫の「最終回収地点」も明確に設計できます。
在庫を「流動資産」に変える
TENTが支援してきた複数の企業では、レンタルモデル導入後に「在庫が止まらなくなった」という嬉しい悲鳴をいただくことがありました。これは、モノの価値が“使われること”によって最大化される状態──すなわち「資産として寝かせる」のではなく、「価値として循環させる」構造です。
たとえばアパレル業界では、シーズンごとの商品を一部レンタルに切り替えることで、過剰在庫を持たずに回転率を高めたり、利用者の好みをデータとして取得できるようになった事例もあります。
在庫を止めず、めぐらせる。この発想は、ShareEaseの世界観──「必要なときに、必要な人へ、自然にモノが届く」循環思想に通じるものです。
なぜいま、レンタルなのか?
消費者の価値観も「所有=豊かさ」から「利用=賢さ」へとシフトしています。
- 家を借りる(従来から存在)
- スキー場でスキーを借りる(従来から存在)
- 音楽を聴き放題で利用する(2008年頃から)
- 車をサブスクで持たない(段階的に認知が広がってきている)
- 子ども服をワンシーズンだけ借りる
このように、すでに多くの生活シーンで“借りる”という選択肢が市民権を得ており、企業側もそれに対応するかたちで商品設計・流通設計を再構築する必要があります。
「借りられること」を前提に作られた商品は、耐久性やメンテナンス性にも優れ、結果として長く使われ、結果として利益率も向上していくのです。
レンタルモデルがもたらす4つの価値
- 在庫の固定化を防ぎ、流動性を高める
- LTV(顧客生涯価値)の最大化
- 廃棄ロスの削減と環境負荷の軽減
- ユーザーデータの取得と再設計への活用
これらは単なる“代替モデル”ではなく、循環型ビジネスを前提とした戦略的選択です。プロダクトのライフサイクル全体を設計することで、企業はモノを売る以上の価値を届けることができるようになります。
おわりに:在庫から、価値の流れを生む
「在庫は資産」という常識が、今まさに問い直されています。
売れずに残る在庫より、**何度も使われる在庫こそが、次代の“資産”**です。
TENTでは、単に貸し出すだけではない、循環を前提にした商品・サービス設計の支援を行っています。在庫に眠る可能性を、めぐる価値へと変えていく。それは単なる在庫処分ではなく、「資産のあり方を再定義する経営」なのです。
弊社株式会社TENTでは、お客様とレンタル事業者をつなぐプラットフォームを運営してきたノウハウから、循環型ビジネス/レンタルビジネスの実施に関するご相談をお受けしております。新たに始めるにあたってお困りの点がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。