「貸せばいい」では成り立たない

「貸せばいい」では成り立たない

在庫管理が破綻すれば、循環型ビジネスは崩れる

シェアリングビジネスやサブスクリプション型サービスの立ち上げにおいて、意外と軽視されがちなのが「在庫管理」の設計です。サービス設計者や経営者は「まずは貸し出せる仕組みを作ること」に集中しがちですが、いざ運用を始めると、すぐに壁にぶつかります。

「返却されたモノがどこにあるかわからない」
「修理対応したいから、その商品1在庫はレンタルは一時休止にしておいた」
「同じ商品を複数人に重複予約してしまった」
「本当は在庫があるのに“在庫なし”と表示されている」

こうしたトラブルが積み重なると、ユーザーの不信感につながり、事業の継続性に大きな影響を与えます。シェアビジネスは、在庫管理なしでは絶対に成り立たない。これが、私たちが現場で何度も体感してきた結論です。

なぜ“貸すだけ”ではダメなのか?

販売型ビジネスでは、「在庫を売ったら終わり」です。しかし、シェアビジネスでは、モノは何度も使われ、戻り、また出ていきます。つまり、**在庫は“動き続ける資産”**になります。

動き続けるものを「数」だけで管理しようとすると、破綻します。

たとえば:

  • 「サイズSのウェア」が3着ある → それぞれの使用頻度や状態は?
  • 「返却済み」の商品 → 本当に使える状態? クリーニング済?
  • 「次の予約」に対応可能か? → 前回使用との間隔は? 

これらはすべて、個体単位での在庫管理=モノのトレーサビリティがなければ判断できません。

落とし穴①:「在庫数」で管理している

最も多い失敗は、在庫をSKU単位の数量でしか管理していないこと。
たとえば「スノーボード 150cm:10本」と表示されていても、実際には:

  • 3本:出荷中
  • 2本:メンテナンス中
  • 1本:破損待ち
  • 1本:返却遅延中
  • 残り3本:貸出可能

こうした内訳を把握しておかないと、「貸せると思っていたのに貸せない」「返却されたのに使えない」というズレが日常的に発生します。

在庫を“数”ではなく“状態”で見る視点がなければ、現場は必ず回りません。

落とし穴②:「返却=在庫復活」だと思っている

もうひとつの罠は、返却=即再利用可能と考えてしまうことです。
実際には、返却後には以下の工程が発生します:

  • 点検
  • クリーニング・修繕
  • 再梱包
  • 再登録 

この「バッファ期間」を考慮せずに在庫を開放してしまうと、次のユーザーに不完全な状態で商品が届くことになります。結果的にCSが悪化し、長期的な信頼を損ねてしまいます。

落とし穴③:モノの履歴を記録していない

在庫の個体ごとに、誰がいつ使い、どんな状態で戻ってきたかの履歴を記録していないと、次の問題が起こります:

  • 同じ商品を繰り返し使わせてしまい、劣化に気づけない
  • 破損品の見落とし
  • 紛失時の責任の所在が曖昧に 

TENTでは、こうした問題に対応するため、すべての在庫に「個体ID」を付与し、貸出・返却・メンテナンスの履歴を一元管理しています。これにより、モノの“記憶”を引き継ぐ仕組みをつくり、在庫の信頼性と価値を維持する循環を実現しています。

在庫管理は“UX”である

在庫管理はシステム的・業務的な話に聞こえるかもしれませんが、**本質的には「ユーザー体験そのもの」**です。

  • 欲しいタイミングで、モノがある
  • 借りたモノが清潔で安心できる
  • サイズや状態が想定通りだった 

こうした信頼の積み重ねは、すべて在庫の管理設計から始まっています。

おわりに:「貸すビジネス」は、在庫設計が命

シェアリングやレンタル、サブスクのような循環型ビジネスは、単なるモノの貸し借りではありません。
それは、モノを動かし、信頼を循環させ、体験を支える“設計”の連続なのです。

「貸せばいい」「数があれば足りる」──そんな甘い見通しでは、サービスは必ずどこかで崩れます。

だからこそ、最初に向き合うべきは「在庫の仕組み」。
それは単なる裏方ではなく、循環を回し続けるビジネスの“心臓部”なのです。

 

TENTでは、在庫管理システム「ZAIKA」を活用し、商品ごとにRFIDを用いることで、万全の在庫管理を実現しています。

弊社株式会社TENTでは、お客様とレンタル事業者をつなぐプラットフォームを運営してきたノウハウから、循環型ビジネス/レンタルビジネスの実施に関するご相談をお受けしております。新たに始めるにあたってお困りの点がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

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