はじめに
「循環型ビジネスはサステナブルである」──この言葉を耳にすることは増えました。しかし経営者や投資家にとって本当に重要なのは、「その投資はどの程度のリターンを生むのか?」という問いです。環境価値と収益性を両立する循環型モデルは、短期的な利益指標だけでは評価できません。本記事では、循環型ビジネスのROI(投資対効果)をどう測るべきか、考えてみます。
従来型ROIの限界
一般的なROIは、「投資額に対する金銭的リターン」で測られます。しかし循環型モデルでは以下の課題があります。
- 回収までの時間が長い:レンタルやリユースは1回の販売で利益を得る従来型と違い、収益は継続的に積み上がる。
- 外部性が大きい:環境負荷低減やブランド価値向上は数値化が難しいが、実際には顧客獲得や取引先評価に直結する。
- 複合的な収益構造:レンタル+再販+サブスク+保証サービスなど、多様な収益源を持つため単純比較ができない。
ROIを測る新しい物差し
循環型ビジネスでは、以下のような多面的指標を組み合わせてROIを評価する必要があります。
- 収益性指標
- 顧客ライフタイムバリュー(LTV)
- 在庫1点あたりの稼働率・利益率
- 回収期間
- 効率性指標
- 在庫回転率(循環回数)
- 回収率・返却率
- 修繕・物流コスト削減額
- ブランド・市場指標
- 新規顧客獲得単価(CAC)の低減効果
- NPS(顧客ロイヤリティー指標)
- サステナビリティに基づく調達・投資評価
- 環境・社会インパクト指標
- CO2削減量
- 廃棄物削減量
- ESG格付け・認証取得状況
事例:レンタル×中古販売モデル
例えば、レンタルを起点に中古販売へつなげるモデルでは、1つの商品が複数回のレンタル収益を生み、その後中古販売で最終的な回収を行えます。
- 投資額:10万円(仕入・初期物流)
- レンタル10回:各1.5万円 → 15万円
- 中古販売:6万円
- 総収益:21万円
一見、単純な販売よりROIは見劣りするように見えますが、実際には 「顧客接点を複数回持てる」「ブランドロイヤリティーが高まる」「環境配慮型として取引先評価が上がる」 といった定性的リターンが追加されます。
ROIを「物語化」する
循環型ビジネスのROIは、単なる数字の比較では不十分です。経営層に提示する際には、「短期利益」+「中長期のブランド・環境価値」 を組み合わせたストーリーに落とし込むことが重要です。
- 短期:在庫稼働率向上、キャッシュフロー改善
- 中期:顧客ロイヤルティ向上、新規顧客獲得効率の改善
- 長期:サステナビリティ評価向上、投資家・パートナーからの信頼強化
この物語を示すことで、循環型モデルは「環境に良い」だけでなく、「企業にとって利益になる」というメッセージが伝わります。
まとめ
循環型ビジネスのROIは、従来の販売モデルと同じ物差しでは測れません。
- 金銭的リターンに加え、
- 効率性・ブランド価値・社会的インパクトを含めて評価する。
この多面的なROIの提示こそが、経営層や投資家を動かし、循環型ビジネスを次の成長戦略へと押し上げる鍵になるのです。
弊社株式会社TENTでは、お客様とレンタル事業者をつなぐプラットフォームを運営してきたノウハウから、循環型ビジネス/レンタルビジネスの実施に関するご相談をお受けしております。新たに始めるにあたってお困りの点がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。