フィジカルな現場にこそ“ユーザー視点”のすべてが詰まっていた
「キャンプ用品を一式揃えるのは大変。でも、使ってみたい」
そんな声に応えるかたちでスタートしたのが、TENTが運営するキャンプ用品のレンタルサービス「Tental」でした。
初心者でも安心してキャンプを楽しめるよう、テント・チェア・ランタンなどをセットでレンタルし、自宅やキャンプ場に届ける──ただの“貸し出し”ではなく、アウトドア体験そのものをサポートすることを目的としたサービスです。
この数年で延べ数万人に利用いただいたTentalの現場から見えたのは、レンタルという行為がいかに人の行動や意識、体験に影響するかという、実にリアルな世界でした。
想像以上に多様だった「借りる理由」
Tentalを通じて感じた最初の驚きは、レンタルの動機の多様さです。
- 初キャンプで道具を一式試したい人
- 仲間を誘って行くために不足ギアを集める人
- 毎回の収納や持ち運びを面倒に感じるリピーター
- 年に一度の家族イベントだけに必要な人
- 海外からの一時帰国中に「日本らしい自然体験」をしたい人
「買うほどじゃないけど、必要」というグラデーションの中に、想像以上に多くのニーズが眠っていました。そして、その多くが**“借りること”を前向きな選択として捉えていた**のです。
ユーザーにとっての“はじめて”を支える設計
Tentalのユーザーの多くが「はじめてキャンプをする人」でした。そのため、単にモノを届けるだけでは不十分です。
- テントの設営マニュアルをわかりやすくする
- 到着タイミングをキャンプ前日指定にする
- 返却用のヤマト伝票をあらかじめ同梱する
- 雨予報によるレンタル料金の不安を解決する
こうした細かなUX改善の積み重ねが、「また借りたい」という声につながっていきました。
特に印象的だったのは、返却時に「ありがとう」のメッセージとともに、丁寧に掃除されたテントやキレイに畳まれたシュラフ(寝袋)が戻ってきたこと。借り手が“誰かに手渡す”感覚で接してくれるという循環意識が、現場では確実に育っていました。
クレームの9割は“説明不足”から生まれる
もちろん、トラブルがなかったわけではありません。返却忘れ、パーツの紛失、破損など、大小さまざまな問題がありました。
しかし、振り返ってみるとその多くは、「事前に伝えていれば防げた」ものでした。
- 返却方法の説明がメールだけだった
- 汚れた状態で返すことへのガイドが曖昧だった
- 延滞時の対応がわかりづらかった
ここから学んだのは、ユーザーの不注意ではなく、運営側の想像力不足がトラブルを生むということ。それ以来、Tentalでは「使う人の立場に立った言葉・順序・量」での説明を徹底しています。
レンタルの本質は“体験の下ごしらえ”
Tentalを通じてたどり着いた結論があります。
それは、レンタルは単なるモノの提供ではなく、「体験の準備」をする仕事だということ。
モノの品質はもちろん大事。でも、それ以上に大切なのは、「安心して、気持ちよく体験を始められる状態をつくること」。その下ごしらえがしっかりしていれば、多少の天気の悪さやトラブルも“いい思い出”に変わるのです。
だからこそ私たちは、返却があった夜に、「どうだったかな」「楽しんでくれただろうか」とスタッフで話し合う。そこに、ただの物流ではない、“人と人のやさしい循環”があると感じています。
おわりに:Tentalは借りる人とつくる体験
Tentalは、私たちが思っていた以上に「人の暮らしに寄り添う存在」になりました。
そして、借りるという行為には、「信頼」「思いやり」「自由さ」といった、人の行動を変える力があることにも気づかされました。
ある土日、雨の中でキャンプをしたお客様から、びしょびしょになった寝袋が返却されたことがありました。その寝袋がこれほど濡れていたということは、きっととても辛く寒い夜を過ごされたのでしょう。
あのユーザーは、またキャンプに行ってくれるだろうか?その中に、少しでも「楽しかった」「またやってみたい」と思える何かを見つけてもらえただろうか。
キャンプは自然の中の体験です。天気さえも含めて「いい体験だった」と思ってもらえるように、Tentalとして何ができるのか。
それを私たちは日々、考えていかなくてはならないと感じています。
モノがめぐり、体験が生まれ、また誰かにつながっていく。
Tentalの現場には、そんな循環型サービスの本質が詰まっていました。
弊社株式会社TENTでは、お客様とレンタル事業者をつなぐプラットフォームを運営してきたノウハウから、循環型ビジネス/レンタルビジネスの実施に関するご相談をお受けしております。新たに始めるにあたってお困りの点がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。