古物商の壁、景表法のグレー──循環型ビジネスと制度のリアル

古物商の壁、景表法のグレー──循環型ビジネスと制度のリアル

循環型社会を支える現場には、まだまだ“制度のほころび”が潜んでいる。

モノを「売る」から「貸す」「回す」へ──
この10年で、私たちの消費行動は大きく変わり始めました。サブスク、レンタル、リユース、中古販売。こうした循環型ビジネスは、エコであると同時に、ユーザー体験の選択肢を広げ、企業にも新たな収益モデルをもたらしています。

しかしその一方で、現場では多くの事業者が制度の壁に頭を悩ませています。とくに頻繁に議論の俎上に上がるのが、古物営業法景品表示法(景表法)です。

循環型のビジネスにおいて、これらの法律はどのように機能しているのでしょうか?

■ 古物商の“線引き”と事業設計のジレンマ

たとえば、ユーザーが使い終わった商品を回収し、再整備して次のユーザーに提供する──
このような「再流通」を伴うレンタルやサブスクは、形式的には「中古品の取引」とみなされる可能性が高く、古物商許可の取得が必要になるケースが多くあります。

さらに、ユーザーから「譲渡」を受けた中古品を再販売したい場合には、古物営業法に基づく台帳管理、本人確認、警察への申請などの煩雑な運用も伴います。

ここで多くの事業者が陥るのが、「どこまでがレンタルで、どこからが中古売買になるのか?」という線引きの難しさです。

  • 貸出後の“オプション購入”は?
  • “使って気に入ればそのまま購入”は?
  • “サブスク”の終了後、所有権はどうなる?

こうした事業設計上の選択肢が、制度上の定義と噛み合わないことがしばしばあるのです。

■ 景表法と“再整備品”のグレーゾーン

もうひとつ、循環型事業者が気を配る必要があるのが景品表示法(景表法)です。
とくに問題になりやすいのが、中古品や再整備品の品質表示訴求表現に関する部分です。

たとえば、

  • 「新品同様です」と表示していたが、実際は細かいキズあり
  • 「通常価格10万円の商品を月額5000円」と訴求したが、その“通常価格”が不明瞭
  • ユーザーが「新品を借りられる」と誤認するような表現

こうしたケースは、優良誤認表示有利誤認表示に該当する可能性があり、違反が認められると措置命令や課徴金が課されることもあります。

とくにシェアリングやレンタルでは、「商品そのもの」だけでなく、「体験」や「ストーリー」を売る傾向があるため、抽象的な訴求がリスクをはらむのです。

■ 法の“想定外”にあるビジネスをどう守るか

古物営業法も景表法も、本来はユーザーを守るための制度です。
しかし、現代のビジネスは制度の想定を超えるスピードで進化しています。

たとえば、個体ごとの使用履歴を可視化して信頼性を担保したり、循環を前提としたモノのライフサイクル設計を行ったり──
ShareEaseのような世界観に近づくほど、既存の制度が追いついていない現実があります。

■ だからこそ必要なのは、“制度との共生”設計

このような状況下で大切なのは、制度と戦うことではなく、制度と共に生きる前提でビジネスを設計することです。

  • 古物商許可の取得を前提とした体制構築
  • 利用規約での所有権移転の明記と明文化
  • 「再整備品」の表示ポリシーを明確化し、CSチームにも展開
  • 景表法を意識した価格表示・比較訴求の慎重な運用

さらに、レンタルやリユースに特化した在庫管理(例:RFIDによるトレース管理)を組み込むことで、事実に基づく透明性が制度との摩擦を減らす手助けになります。

■ 制度を「制限」ではなく「信頼の設計図」に

制度は事業の可能性を制限するものではなく、ユーザーとの信頼を設計するためのルールブックでもあります。
制度との距離感を把握し、あえてそこに沿った設計を行うことが、循環型ビジネスの“長寿命化”には欠かせません。

これからの事業者には、プロダクトだけでなく、「制度に強い設計」もまた求められています。

 

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